設計事務所に務めていた頃、ある先輩が言った言葉は今でも時々思い出す。
住まい手の立場に立って 生活や仕事の流れを想像し、心地良いデザインを考える。
そのためにはノウハウやセンスも必要だが、そこに住む“人”を想う気持ちがないといけない。
でなければ、いかに美しくても、いかに機能的でも、
住まい手にとっては不満足な建築となる危険性がある。
…と、ちょっと気が強いけれど 情の厚い彼女の言葉を 僕なりに解釈している。
それは ありふれた考えと言ってしまえばそれまで。
たぶん自分も 住まい手のことを考えて仕事しろって言われれば
「そんなの当たり前。」って偉そうに言っていそうな気がする。
でも、出来ていると思っていても だんだんとズレてくる事もある。
数年前に聞いたその言葉は 今でも自分を律する大切な言葉になっているし、これからも きっとそうだろう。
「建築に対する思い入れが強く 固執するあまり、住まい手への配慮が希薄になってないか。」
まだまだ未熟だが、常に自問自答して 住まい手のための建築を提案していきたい。


床や壁などの仕上材、造付家具やカウンターなどの造作材、建具、設備類、景色、
引渡し後に搬入されるであろう家具小物類 等々、
そこに住まう人を含め いろいろな要素が混ざって一つの空間をつくっている。
商業建築の場合は あえて崩す時もあるが、住宅建築は特にまとまりが大切だと思っているし、
加えて落着いた空間になるよう心掛けている。
たとえ、吹き抜けがあるような大空間でも、枠材などの造作材の見え方、照明や自然光の取入れ方、
素材感、視線の誘導などを熟考して落着ける空間になるよう設計していく。
カッコイイ空間もたまにはいいが、毎日毎日 何十年も暮らしていく家だ。
あまり緊張感のある空間より、ゆっくりくつろげる空間の方が個人的には好きだなって思う。
だから、引渡し直後の小奇麗な住宅より、何年か生活してもらった後の、
適度に生活感のある家の方が 自然で暖かみがあるような感じがする。

心掛けていることは まだまだ沢山あるけれど、
これからの会話の中で 僕という人間も含めて 感じ取って頂けたなら幸いです。
ありがとうございました。


二級建築士:出村昌也
1976年 福井県生まれ
2009年 福井市高木町にてDEMU建築設計事務所設立

コメントは受け付けていません。