畑の中の家。作物越しにに見えるあらわしの構造躯体が建物にリズムをつくっている。低く、長い形。建物東側には玄関ポーチ土間と濡縁が約14mにわたって伸びる。その奥に見える黒い外壁は焼杉板張りの外壁で、伝統的な焼杉板を岡山から取り寄せた。建材物の焼杉とは耐久性が全く違う。端正な雰囲気の道路正面外観。大屋根の雨樋(軒樋・縦樋とも)は見えない所に設置。雨じまいを十分に検討しないと出来ない納まり。畑に面する玄関。幅1.2mの米杉羽目板の引戸。小窓にはアンティークの歪みガラスをはめ込んだ。大屋根の下の濡縁。材種にはアイアンウッドも考えたが、この家にはもっと厚手のざっくりとした材が似合うということで、こちらも高耐久のカリフォルニアレッドウッドを選定。濡縁から眺める庭。その奥には畑が続く。この時期の畑は本当に生命力にあふれている。駐車場からの庭。奥の黒壁と緑のコントラストがきれい。駐車場には畑仕事に来ていた施主のお母さんの自転車が。玄関。左手のタモ材のパネルは、和室引戸とトイレ開き戸、玄関は建具や通路が多く、ごちゃごちゃしやすいので、なるべくすっきりと納めた。ホールから玄関を見る。壁一面の玄関引戸からこぼれる朝日で、とても気持ちのよい空間。玄関式台。施主のお父様がもっていた栃の木を使わせてもらいました。縮み杢などの特徴のある木目が印象的です。暴れやすい材種なので丁寧に施工してもらいました。玄関横のシュークローク…といいながら靴以外にもコートにスノーダンプ、灯油タンクまで色々なものがあります。収納力はバツグンです。LDK。右手には庭を介して畑が広がる。2階のオープンスペースまで吹抜けで繋がるかなり開放的な空間。これだけ広くても屋根150mm厚のセルロースファイバー断熱で冬でも快適に過ごせたそうです。左手がスタディーコーナー。今ここはご主人の魂の椅子“ハンス・ウェグナー”デザインのPP68の定位置となってます。リビングからダイニングキッチンを見る。ダイニングテーブルは将来的にはもっと大きいものを造作したいということで、ランプコードは長めにして移動できるようにしてある。キッチンからリビングを見る。手前はお菓子やパンを作る奥さんのための作業台。キッチン吊戸棚は造作。レンジフードも棚と同じ面材で仕上げた。幅3間(約5.5m)の3連木製サッシュ。左2枚は引戸なので幅3.5mの開口となる。夕刻の縁側。ごろんとしたくなる…というかしてました。畑との繋がりを強調したかったので、框を隠して木製サッシュの存在感を消している。スタディーコーナー。引出し付きのカウンターと、左側にあるのがキャットタワー。撮影時は小物を置きましたが、今は2匹の猫たちが絶賛活用中。キャットタワーをのぼると、こんどは猫用の通路が。日向ぼっこ用の小窓の先にはトンネルがあって、2階のオープンスペースに繋がってます。もちろん掃除のことも考えて設計してます和室。壁仕上はシリコン樹脂のマットホワイト塗装。光をやわらかく反射して清々とした雰囲気。和室窓。障子戸とフロストガラスの組合せ。陰影がきれい。寝る部屋。ここは持込み家具で立派な焼き桐箪笥を置く予定なので、それに合わせて落ち着いた雰囲気に。壁、天井とも吸放湿性能に特化した左官材で仕上げている。2階のオープンスペース…という名のマンガコーナー。下の引出しも漫画サイズに合わせた2段引出しになっているので、まだまだ置けます。オープンスペース。リビングの天井がそのまま連続している。右手奥の小穴は猫用のトンネル。彼らはここからオープンスペースに出て、また階段から降りていく。2階子供の部屋。リビングの天井がオープンスペースを介して子供部屋まで連続している。床も連続してるので、天井まである大きな引戸を開けると連続した空間に感じる。将来は2部屋に分けることも可。洗面所。キッチンから脱衣所に向かう廊下の一角に設置。お客さんが使うときも洗面所には入らなくても良い。

十間ハウス

十間ハウスの施主夫婦とは福井ケーブルテレビの「5スペる」という番組がきっかけで出会った。知人の誘いで出演したその番組で僕の建築を紹介したわけですが、その時のリポーターの広瀬さんという方が、僕の建築や考え方を気に入ってくれて「出村さんの建物に対するこだわりを聞いていると、この家1棟だけでも5時間番組が作れそうですよ。」と冗談でも嬉しいことを言ってくれた人でした。その広瀬さんが、取材も終わろうとしている時に「実はですねぇ、僕の友人で家を建てようとしている人がいまして…」と、そんな感じの流れで施主夫婦との接点が生まれたわけです。
十間ハウスの敷地は240坪の畑の一角を住宅用地として分筆するということでした。当時はハウスメーカーや工務店等、数社提案を受けていたが まだ決めかねているという状態でした。最初の顔合わせで、今までの経緯や要望を聞いていると、施主夫婦の生活に対する考え方やリズム、スタイルが僕の設計にかなりピッタリとはまっていく感覚があり、「これは何が何でもやらせてもらわなければ。他の会社になんて任せておけない。僕じゃないと!」 ちょっと不遜でしたが、今思えばかなり前のめりでプレゼンに挑んでいたような気がします。
その後 打合せを重ねて、最後は超高気密高断熱を売りにするハウスメーカーとの一騎打ちの結果、僕が設計監理をさせてもらうことに。施主夫婦には、構造や断熱等の技術的な部分も含め 僕の住宅に対する考えに共感してもらい、信頼関係が築けたし、何より“畑と繋がる家“というコンセプトを気に入ってもらえたのだと思ってます。

十間ハウスはおおらかな住宅です。
外観は名前の通り南北に10間(18.2m)の細長いシルエット。最高高さも5.8mとほとんど平屋のような階高となっている。畑の一角に建つ住宅なので そびえるような圧迫感のある建物にはしたくない。畑に馴染むような外観というのが常に頭にあった。その畑に面して玄関や 長い濡縁と大きな開口が畑に向かって並んでいる。そして住宅と畑の間には庭と背の低い板塀が配置され、枕木を敷詰めて作った小道でそれぞれをゆるやかに繋いでいる。
内部はあまり間仕切りで区切らず、包容力のある やわらかい空間を、細やかな納まりが適度に引き締めている。また、この家は猫を飼うことを前提に計画されているので、人の動線とともに猫の動線も考えられています。キャットタワーや猫用の通路、トンネル等を組み合わせて上下運動と回遊性をもたせて彼らがストレスなく伸びのびと暮らせるように考えました。
竣工まで長かったですが、お互い共感できる部分が多くて とても楽しく仕事をさせてもらいました。今後、農具やタイヤ、自転車などを片付ける小屋なんかを造れたらいいねと話したりもしていたので、また近い将来一緒に仕事ができる時が楽しみです。
その時は、そしてそれからも、よろしくお願いします。

施工:株式会社たからや
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