施主と最初にお会いした時は、奥様だけだったように記憶しています。既に建売やハウスメーカーなど検討されていたのですが、どうしても納得できなかった奥様は、一生に一度の事だからということで、僕に会うことを決断してくれました。
最近はテレビなどの影響で多少は身近になった設計事務所ですが、いざ依頼するとなるとなかなか腰が上がらないものです。この奥様も同様だったようですが、出て来たのが緊張感なさそうな男で、最初はずいぶん不審に思われたことでしょう。
もちろん何度目かの打合せ時には、不審はなくなり信頼に変わっていった(たぶん)と思います。
その後、ご主人も加わって打合せをすることになったのですが、当初は夫婦間で住宅に対する想いに温度差があって、ご主人は若干?テンションが低かったように感じました(スミマセン)。 でも話をするうちにご主人も段々と想いを口にするようになってくれて、割とスムーズに設計作業は進められたと想います。建築中にはこんなこともありました。外壁工事が終わった後、ご主人がレッドウッドの外壁材を触りながら「これから段々と味が出てくるんですかねぇ」としみじみと言っていました。そばで見ていて、自分の家に対する愛着が伝わってきました。設計初期の頃に「風合いとかにはそんなに興味がない」という言葉を聞いていた僕としては一段と嬉しかったです。
ちなみに当事務所ではなるべく自然素材を使います(できてない所もまだまだありますが)。それは 肌触り 吸放湿性 サステナビリティ、イロイロあるけど、一番は古びた時に美しくあってほしいからです。新建材は最初が一番キレイだけど、後はどんどん劣化していくだけ。でも自然素材は 木にしろ、石にしろ、鉄にしろ、古びた時の美しさがあります。無理に一番最初のキレイさを維持しようと思うよりは、適度にメンテナンスをして、自然な風合いを感じてほしい。そして愛着を持ってほしいと思っています。本来、日本人ってそういう所を美しいと感じられる美意識をもっている人が多いのだと思う。
大島台の家、ご夫婦には2人の元気なお子さんがいます。この元気すぎる?お子さんのために、間取りも回遊性をもたせ、忙しい奥様の家事動線をコンパクトにまとめ、濡縁も奥行きを広くし、庭も大きく取りました。この「でむらさん。でむらさん。」と懐いてくれる小さな施主に出会った時から、設計は半分くらい決まっていたのかもしれません。建築中、何か問題が発生しても、このお子さんの「でむらさん。」攻撃と、ご主人の「出村さんなら何とかしてくれると思っているので、全然心配してません。」(なぜか自信満々)という必殺攻撃の前には「もちろん何とかします。」以外、何が言えるでしょうか。。。
兎にも角にも、こうして大島台の家は無事竣工を迎えました。2人のお子さんが元気に走りまわって「でむらさん。ありがとう。」という言葉を聞いたときには、これだから設計はやめられないとじみじみ感じました。
