ムロの家の話を頂いた時は、当事務所を除いてすでに6社程がプランを提出している大混戦状態で、業種も大手ハウスメーカー、工務店、設計事務所入り乱れての競合でした。
ムロの家の施主とは実は小中学校の同級生である。ずっと疎遠になっていたから、お互いに家を建てることも、設計の仕事をしてることも知らなかった。
僕が独立した時も知人にことさら知らせることもしていなかったのですが、今思うと我ながら呑気なものだなぁと思います。今回は共通の友人が新築計画を教えてくれて、急遽、ムロの家コンペティションに途中参戦することに。
で、そんなこんなで数カ月後には2社まで絞られて、最終的には第1回目に提案したプランが ベース案として採用される形となりました。
ムロの家はいわゆる完全同居型2世帯住宅です。玄関やLDK、設備関係は共有するので、全て別々の二世帯住宅と比べると世帯間の距離がぐっと近くなる。当然、家族間の関係も より複雑になるし、家族構成も変化しやすい。
ムロの家はそれらに柔軟に対応できるおおらかな家にしたかった。例えば子供部屋は15帖+ロフト7帖のちょっとした大空間である。ロフトスペースは平面だけでなく高さ方向にも広がりを生み、たくさんの友達が来てものびのび遊べる。2間幅の開口はリビングの吹抜けと繋がり、両親や祖父母が子供部屋の雰囲気を感じられるようにしている。子供が大きくなれば奥に子供用の個室を作り、手前を書斎にするもよし、新しく産まれてくるかもしれない家族のための個室にするもよし、廊下と一体のオープンスペースにするもよしのフレキシブルな空間としている。
あと、ムロの家は施主の趣向もあり、地味な感じの当事務所にしては演出が多めというか、見せ場が多い。どこが?とか激しく突っ込まれそうだが、まぁ あくまで当社比ということで。。。あまりに過剰で浮いた演出はしたくなかったので、繊細すぎず、なおかつ品もあり、地味すぎないバランスを考えました。そこらへんのバランスは施主も喜んでくれたようで、各部の素材やディティールにはかなり神経を使った僕としては面目躍如といったところで ホッとしたものです。
最後に。子供の頃に(自分も含め)バカなことばかりしていた友人が、世帯を持って社会の一員として立派に頑張っているのは嬉しくもあり、ちょっとだけ寂しい気もするというか…、なんだか不思議な感じがします。でもって自分も歳とったなーと思います。 同級生の彼は本当に多忙な毎日で、毎晩遅くまで仕事をして、休みもほとんどないような状況で、それでも現実と向き合って頑張っています。この家が彼とその家族に安らぎを与え、また彼の仕事に貼り合いを与えられる存在になりますように。と、思います。
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正面外観。
正面の縦格子と側面の板張り壁が、表情をほどよく引き締めている。
幅8m、高さ3mの縦格子。建物のイメージに合わせ、繊細になりすぎないように、厚み4cmの太格子とした。
溜り(広場)部分を含めて、総延長13mの濡縁。 軒の出1.7mの庇が、夏場の直射日光を遮り、風雨から建物を守る。
濡縁の手前には南条珪石の砂利敷き。飛び石は既存の庭に敷いてあった笏谷石を利用した。
玄関。ポーチ土間は三和土(土の土間)になっている。玄関引戸を開けると正面に大きな窓があり、小さな石庭越しに田園風景が広がる。
玄関土間から大谷石の土縁が伸びる。土縁脇に座敷を配置し、急な来客にも対応できる。二世帯共有のリビングの場合は、玄関から直接上がれる客間は特に有用だ。
土縁。夜の風景。花器をたくさんお持ちとのことで、奥に大谷石の飾り床を設置。季節の花が飾られる。…たぶん。
両世帯共通のリビング・ダイニング。左手奥の障子戸は子供部屋に繋がっている。
天井の間接照明。壁際の光が天井のシナ板に反射してやわらかく照らす。リラックスしたい時は間接照明の明るさだけで十分だ。
床は足ざわりの良いボルドー産パイン浮造り仕上げ。大人数でも狭く感じないように、高さ方向も開放的な大空間。
鉄と木を組み合わせた階段手摺。強度を保ちつつ、スッキリしたデザイン。ギリギリまで細くしているので試作しながら材の寸法決めを行った。
2階ホール。施主セレクトの陶器製手洗ボウル。手洗いの左隣にあるのは書斎へのにじり口風の入口。
穴ぐらのような書斎。カウンターの両脇から光と風が入る。 床は杉の置床で、持ち上げると収納スペースが現れる。
子供の部屋。かけっこできます(笑) 壁際にある12個のスクエアボックスは好きな場所に移動できます。強度があるので椅子にもなります。
天井まで伸びるロフトへのハシゴ。下手な写真で分かりにくいですがホワイトチョコのような優しい色。実は密かにお気に入りです。
ロフト。寝っ転がると右側のハイサイドライトがら奥越の山並みが見えます。
子供部屋とリビングを繋ぐ開口。障子戸が入るが、普段は取り外して使っているみたいです。
子供部屋からリビングを覗く。