施主との出会いは「ムロの家」のオープンハウスでした。
県内外の施工業者の事を細かくご存知で、当時から勉強熱心なご主人と 笑顔が可愛らしい奥様、元気な男の子のご家族で、将来の新築に向けて色々と見て回っているということでした。
それから数年後、別のオープンハウスで再開するまで、特にお会いすることもなかったのですが、その間も色々と住宅を見て回られていたようです。それで土地の方も決まりそうだということで「図面書いてもらえませんか。」という話になりました。
「今泉の家」の土地は道路面が一番間口が広く、奥に行くにに従って間口が狭くなっていく、台形型の土地でした。
当初は予算の関係もあり、総2階建てのシンプルなプランを提案しました。
施主にも気にいってもらえ 打合せも順調に進んでいましたが、敷地形状のせいもあって道路に対して開放的すぎるだろうか…と、ちょっとした違和感みたいなものがありました。
もちろん板塀等で視線を遮ることは可能で 当初からその予定でした。プラン自体も悪くない。ないのだけど…、もっとこの特徴的な敷地形状を活かしたプランが出来るのではないかと思い、全く新しいプランを考えることにしました。
新しいプランは、もっとも間口の広い道路面に階高を抑えた2階建てのボリュームを持ってきて敷地内への視線を遮りつつ、地域に対して閉鎖的になり過ぎないよう、通り土間を設けて道路と庭を繋ぎ、風や視線の抜け道を確保しました。
また、奥には平屋のリビングダイニングと中庭を配置し、道路の視線を気にすることなく寛げるプライベートスペースとしました。
僕としては絶対に新しいプランの方が良いと思っていたので、基本図面と模型を作った時点で、初めて提案しました。
施主にしてみたら、打合せに来たら全く違うプランの話をされて驚いたと思います。
僕も「施主がどう受け止めてくれるだろう」とちょっと緊張気味でしたが、施主夫婦は共に新しいプランをとても気にいってくれて「これで行こう!」ということになりました。
工事が進み、大工仕事も終盤に差し掛かった頃、棟梁が車中で昼休憩をしていると、下校中の女の子が通りがかりに「私、この家好きなんやぁ」と友達と話しているのが聞こえたそうです。
後からその話を聞いて、この家は施主より一足先にこの地域にとけ込んでいるのだなと感慨深かったです。
続きを読む
長のボリュームを配置してプライバシーを確保。圧迫感がないよう、階高を抑えている。
階高を抑えた横長のシルエット。板塀と相まって程よく上品な雰囲気になった。
玄関の通り土間。地域に対して閉塞的になりすぎないよう、中庭と緩やかに繋げた。プライバシーを保ちつつ視線、風の抜け道になっている。
広い通り土間は自転車置き場にもなっている。左手が玄関。上にはデッキテラスを作りました。
玄関の反対側は外物置。よい既製カンヌキがなかったので、デザインして作りました。シンプルに力強く、そして安く!
こちらもオリジナルの表札と郵便受。外壁の羽目板の目地に合わせてデザイン。
玄関ホール。階段は比較的安価な材ですがディティールには拘ってます。
玄関横の家族玄関。靴からスノーダンプまで何でも置けます。
家族玄関からホールをみる。エッジのきいた階段のラインがきれい。華奢に見えるが構造的にもとても頑丈な階段です。
階段からホールを見る。今はこの地窓から青々とした芝生が覗く。何気に好きな写真。
南部栗フローリングと畳敷きのリビング・ダイニング。奥の8帖部分は梁に仕込んだスクリーンで仕切る事ができる。
リビングのフルオープンサッシュ。
リビング縁側から庭を見る。
中庭と家庭菜園。庭に面するリビング・ダイニング部は平屋造りにして、奥に写る隣家への日当たりを配慮している。
「今泉の家」のためにデザインしたタモ材のテーブル。天板と門型脚が2脚のみの構成。幕板や反止めなしでも大丈夫なように構造的な観点からもデザインした。製作はマエダ木工さん。
ダイニング横のキッチン。奥の窓からはハナミズキが見える。
明るい洗面所。ホールから入り、奥には洗濯乾燥室→パントリー→家事コーナー→キッチンへと繋がる回遊動線。
コレクションの多いご主人のための細長い書斎。
寝室と書斎の間にあるデッキテラス。この半外部空間があるので、書斎は別棟のような感覚になる。
ちなみにステンレスのポールは物干用ではなく、ご主人の懸垂トレーニングのためのもの。
デッキテラス夜景。
デッキッテラスから庭とリビングを眺める。自分の家を上から眺めることは意外と少ないかもしれない。
寝室。掃出し窓のおくにデッキテラスがあるので、プライバシーを保ちつつ、開放感のある空間。
庭からダイニングを眺める。
浴室から見る坪庭。ヒメシャラとドウダンツツジがを植えた。新緑や紅葉が楽しめる。