■福井の気候風土に寄り添う住まいづくりの重要性
「年間を通じて湿度が高い福井の環境」
僕たちの住む日本列島は南北に長く、地域によって環境も異なります。それが四季の変化と相まって懐の深い文化を創り出していますが、住宅を造るうえでもその違いは大きいです。
例えば本州仕様の住宅を沖縄で建てると、夏型結露により躯体が腐朽してしまいます。(実際によくあった話です)沖縄は極端だろ。と突っ込まれそうですが、中部地方に絞っても構造、温熱、耐久性的にウィークポイントは変わってきます。

福井県の省エネ基準地域区分(断熱的に大体同程度の性能が必要だよね という地域で分類される)は5・6地域がメインですが、福井県は特徴的な要素があります。それは同地域の中でも「冬季の温度が低く、湿度が高い」という事です。もちろん夏は湿度が高いのは同じなので、福井県は年間を通して湿度が高いとも言えます。
ちなみに冬の温度が低めなのは「まぁ、殆ど曇天だからなぁ…」と福井在住経験がある人ならすぐに納得できるのではないでしょうか。
※福井でも冬より夏の湿度の方が圧倒的に多い。(冬の4~5倍)それでも同地域の中ではトップクラスに冬の湿度が高い。
福井でも冬に外に出ると肌が乾燥すると感じますが、東京(主に6地域)だと更に強く乾燥を感じる人が殆どではないでしょうか。
ここでは湿度にフォーカスして話しますが、夏も冬も湿度というのは建物…とりわけ木造建築にとって大敵です。木を腐らせる腐朽菌の活動には「栄養(木材)」「水分」「空気」「適当な温度」の全てが必要だからです。
上記のうち「水分」以外はコントロールが困難です。(もちろん冬に暖房せず、常に0度前後を維持できれば「温度」をコントロールしても良いですが)
だから水分≒湿度をコントロールする必要があるという事です。
福井県では冬の湿度が高いという事は当然結露のリスクが高くなるという事です。サッシュの結露だけなら目視で確認できますが、躯体内の結露であれば木材の腐朽が進行しても気付くことは困難です。
でもメリットもあります。加湿器等で加湿しなくても、生活から出る水分だけで室内湿度を40~50%でコントロールすることも可能です。実際、自邸もそうですが僕の設計した住宅では加湿器を使ってらっしゃる方は殆どいないです。
大事なのは人がある程度快適な温湿度帯でも結露が起きない断熱構成を物理的根拠をもって考えられるか。という事です。人が住んでいない乾燥したモデルハウスで結露していなくても意味がないのです。
また、物理的根拠をもって提案できるか。というのは大切な要素で、根拠があるからこの温湿度になれば結露が起きやすい等、基準も分かるので住まうための指針や問題解決の糸口にもなります。
翻って夏はどうでしょうか。
福井県の夏は同地域帯と同じく高温高湿です。
実は最近、住宅が高性能化していることで、一つの問題が顕在化してきています。
それは「室内の湿度が下がりにくい」という事です。 以外かも知れませんが高気密高断熱住宅は、温度を下げることは簡単ですが湿度を下げるのは性能が高くなるほど相対的に困難になってきます。
だからといって湿度を下げるために、性能を落として光熱費をじゃんじゃん使ったり、最近の暴力的な暑さを通風などで凌ごうと考えるのは本末転倒です。
ですから、より効率的に湿度を下げるための空調計画が必要になってきます。当事務所では基本計画時に空調計画も考え、機器の選定や配置、経路まで提案していますが、その辺りを疎かにして、断熱気密の数値(UA値やC値)ばかり追い求めていると快適な住環境は実現できないのです。
■後悔しないための設計事務所・工務店選び
「数値や根拠に基づいた提案があるか」
住宅を建てるにあたってどこに依頼するか迷われる方が大半だと思います。殆どの人がご自身の人生を左右するような大金を掛けて家を建てるのです。ですからそれに見合った価値のある住宅を建てたい、失敗はしたくないと思うのは当たり前のことだと思います。
ちょっと昔話をすると、僕がこの業界に入って最初にしたのは影響でした。当時は住宅に対する知識も乏しく設計をやりたい!という熱意だけで仕事をしていました。
幸運?な事に接客をしてすぐに優しそうなご夫婦を担当する事になりました。そのご夫婦は僕のことを「誠実に対応してくれそう」と大変気に入って頂き、話がとんとん拍子で進み、もう次は工事契約という段階まで来たのですが…その段階に来て急に怖くなってきました。こんな知識も経験もない自分が、本当にこのご夫婦の一大イベントに並走して良いのだろうか?と。ひよった僕は上司に辞退を申し出たのですが、結局は上司とペアで担当することで何とかやり切ることができました。
昔話まで引っ張り出して何が言いたいかというと…、人対人なので「誠実そう」とか情緒的な感覚も大事ですし、相性も重要だと思います。だけど物理法則の塊でもある住宅を建てるのにそれだけだと失敗する可能性がありますよ。という事です。人間性だけではなく、例えば工法などについても「うちは○〇システムだから快適です」「□□工法だから安心です」というフワッとした説明ではなく、数値や根拠に基づいた提案があるかが重要です。
例えば「○〇システム」自体は素晴らしくても、システム以外の諸条件も同じですか?好条件での検証結果ではないですか?どんな間取りでも例外なく効果が発揮できるのですか?「□□工法」が耐震的に素晴らしくても、家の形、柱や壁の配置で結果は全然変わってきませんか?
「そんな難しいことは分からない。それはプロとしてそちらが考えることだ」と思われるかも知れません。全くもってその通りだとは思います。思いますが、残念ながらそれでは後悔する可能性が高いのが現状です。 少なくとも契約まではご自身が完全に腹落ちするまで確認して、しっかりコミュニケーションをとることが大事だと思います。(これは私見ですが契約までは徹底的に疑っても良いと思います。でも、契約後は同じチームの一因として信じぬく方が結果的には良い方向にいくと思います。建築士の立場で言う事ではないかも知れません…適当に聞き流してください)
「実際の施工事例から空気感や質感を確かめる」
実際に施工した建物を見学することも大事です。建築士や施工者の実績の確認もそうですが、新築に向けてイメージもつきやすいと思います。当事務所でも最近はなるべく内覧会を開催することにしたので、完成物件を見てもらう事もできます。
また、事務所兼自宅をモデルハウスとしても活用しているので、こちらの方がよりイメージしやすいと思います。2026年10月で住み始めて丸8年、普通に家族4人で住んでいますのでキズ等も含めて生活感や経年変化をより感じてもらえると思います。
特に、冬や夏であれば実際の温湿度や空気感も分かるので僕がうざうざと話しているより説得力をもって感じてもらえると思います。このコラムの執筆は8月ですが、この時期の来客の玄関入ってすぐの一言目はだいたいが「涼しい…」です。(室温は低くても、湿度が高かったり、壁や窓が暑くて輻射熱を感じながら暮らしている方も多いので、ひんやりした空気感を感じてもらえているのだと思います)
皆さんも具体的なプラン依頼でなくても、モデルハウス見学という感覚で見に来て頂けると嬉しいです。

■まとめ
ここまで読んでくださりありがとうございます。
後編は…
「設計事務所と進める家づくりの特徴」
「福井の夏を快適にする空調設計の考え方」
について書いていますので、そちらもご覧いただければと思います。
また、以下の設計一覧も覗いていただけると嬉しいです。